「グリス塗り直したのに全然温度が下がらない…」——自作PC歴5年目の自分が最初にグリスを塗り替えたとき、まったく同じ経験をした。塗り方が雑すぎて、CPU温度が逆に3℃上がったという笑えない失敗だ。グリスは品質も大事だが、量と塗り広げ方を間違えると高性能なものを使っても意味がない。

この記事ではCPUグリスおすすめ7選を価格帯・熱伝導率・用途別に比較しつつ、正しい塗り方と量の決め方を実体験ベースで解説する。「付属グリスのままでいい?」「どれを買えばいい?」という判断基準も整理したので、グリス選びで後悔する前に確認してほしい。

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  1. CPUグリスは本当に必要?交換が必要なサインを整理する
  2. CPUグリスの選び方 4つのチェックポイント
  3. CPUグリスおすすめ7選|価格帯別に徹底比較
  4. CPUグリスの正しい塗り方・量の決め方
  5. よくある失敗3パターンと対策
  6. まとめ:グリス選び&塗り方チェックリスト

CPUグリスは本当に必要?交換が必要なサインを整理する

温度が上がってきたら交換のサイン

CPUグリスの劣化は少しずつ進む。「最近ちょっとファンがうるさくなった」「アイドル温度が昨年より高い」と感じたら、まずグリスの状態を疑うべきだ。組んでから3年以上経過している場合は、症状がなくても予防交換を勧める。

CPUグリスを放置するとどうなる?

乾燥・固着したグリスは熱を伝えにくくなり、CPU温度が上昇します。高負荷時の熱暴走やサーマルスロットリング(自動クロックダウン)の原因になります。

付属グリスとの性能差は確実に存在する

クーラーに同梱されている付属グリスは「動けばいい」レベルのものが多い。ARCTIC MX-4(8.5 W/m・K)と一般的な付属グリス(約3〜4 W/m・K)では熱伝導率が2倍以上違う。Ryzen 9やCore i9のような高TDPのCPUを使っている場合、この差がそのまま温度差(5〜10℃)として現れる。

3〜5年で劣化・乾燥して温度上昇

初心者
初心者
3年前に自作したんですが、グリスってまだ大丈夫ですか?
正直、3年経ってたら交換した方がいいです。シリコン系グリスは乾燥すると導熱効率が落ちる。MX-4やKryonautなら「8年持つ」と謳ってるけど、それは製品品質の話で実際の環境依存が大きい。
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CPUグリスの選び方 4つのチェックポイント

① 熱伝導率だけで選ぶのが危険な理由

「熱伝導率が高いほど冷える」と思いがちだが、実際は塗りやすさ・広がりやすさ・導電性のバランスが重要だ。金属系グリス(液金など)は熱伝導率が極めて高いが、はみ出すと回路がショートする。初心者には絶縁系(シリコン・カーボン系)一択を強くすすめる。

② シリコン系・金属系・カーボン系の違い

種類 熱伝導率 導電性 おすすめ対象
シリコン系 3〜8 W/m・K なし 付属品・超入門
カーボン系 8〜16 W/m・K なし 初心者〜上級者全員
ダイヤモンド系 10〜16 W/m・K なし コスパ追求派
金属系(液金) 50〜80 W/m・K あり 上級OC専用

③ 価格帯別の目安(600円〜3,000円)

正直、1,000〜1,500円のカーボン・ダイヤモンド系グリスで十分だ。3,000円超の液金グリスはリスクが高く、一般的なゲーミングPC用途ではコスパが悪い。予算別の選び方はこう考えるといい:

  • 〜1,000円:Thermalright TF7、JP-DX1(入門〜中級)
  • 1,000〜1,500円:MX-4、NT-H1、SMZ-01R(メインストリーム)
  • 1,500円以上:Kryonaut、NT-H2(OC・高TDP向け)
CPUグリスは何年に一度交換すればいい?

使用環境にもよりますが、目安は3〜5年ごと、または温度が上昇してきたタイミングです。高品質グリス(MX-4等)は最大8年の耐久性を謳いますが、予防交換を習慣にすると安心です。

商品名 熱伝導率 容量 価格帯 おすすめ用途
ARCTIC MX-4 8.5 W/m・K 4g 〜¥1,400 初心者〜全般
Thermalright TF7 12.8 W/m・K 4g 〜¥900 コスパ最重視
Noctua NT-H1 〜8.9 W/m・K 3.5g 〜¥1,300 空冷クーラー定番
AINEX JP-DX1 16 W/m・K 3g 〜¥1,200 国産・コスパ重視
Thermal Grizzly Kryonaut 12.5 W/m・K 1g 〜¥1,500 OC・高TDP CPU
シミオシ OC Master SMZ-01R 13.2 W/m・K 1g 〜¥1,200 ネコグリス・上級向け
Noctua NT-H2 NT-H1比+改善 3.5g 〜¥2,200 NT-H1の後継上位版

① ARCTIC MX-4——迷ったらこれ一択の定番グリス

自作PC界でもっとも売れているグリスで、これを選んでおけば間違いないという安心感がある。熱伝導率8.5 W/m・Kは付属グリスの2倍以上。4gで複数回使えるコスパと、塗りやすい適度な粘度が初心者にやさしい。「とにかく失敗したくない」ならMX-4を選べばいい。

② Thermalright TF7——熱伝導率12.8W/mKがこの価格帯で買える

「MX-4より性能が高いのに安い」という口コミが多く、コスパ最強候補として急浮上してきたグリスだ。12.8 W/m・Kという高い熱伝導率を実現しながら、4gで900円前後という安さがずば抜けている。初めて良いグリスを買いたいが予算を抑えたい、という人には一番バランスが取れた選択肢だと思う。

③ Noctua NT-H1——空冷クーラーと組み合わせる定番の一本

Noctuaのクーラーを買うとほぼ付属してくるやつ。単品でも購入できて、塗りやすい柔らかめの粘度が空冷ユーザーに人気だ。「ヘラで薄く塗り広げたい」人にはNT-H1が一番扱いやすい。空冷CPUクーラーを使っているなら、グリスもNoctuaで揃えるのが相性がいい。

④ AINEX JP-DX1——国産ナノダイヤモンドの実力派

アイネックスは日本のPCパーツメーカーで、JP-DX1はナノダイヤモンドを配合した本格的な一本だ。熱伝導率16 W/m・Kという数値はこの価格帯では異色で、国産品の信頼性を求めるユーザーに長く支持されている。少量でよく広がるので、3gのコスパは悪くない。

⑤ Thermal Grizzly Kryonaut(クマグリス)——高TDP CPUのOCにはこれ

「クマグリス」の愛称で知られ、Ryzen 9 7950XやCore i9の高TDP環境でKryonautに替えたら10℃下がったという声をよく聞く。ただし1gで高価なので、普通のゲーミングPC(65〜125W)に使うにはオーバースペックに感じることも。簡易水冷とグリスの関係についても確認しておくと、より適切な選択ができる。

⑥ シミオシ OC Master SMZ-01R(ネコグリス)——日本のプロOCerが作った一本

日本のオーバークロッカー「清水貴裕」氏が開発に関わった製品で、粘度が低くCPUヒートスプレッダに均一に広がりやすいのが特長だ。熱伝導率13.2 W/m・Kとかなり高く、1gという少量でコンパクトに使える。グリス塗り作業に慣れてきたら試したい上位グレード。

⑦ Noctua NT-H2——NT-H1から着実に進化した後継モデル

NT-H1の後継として開発されたNT-H2は、マイクロ粒子の配合を改良してNT-H1比で熱性能を高めている。NT-H1より扱いやすさは同等で、クリーニングワイプが付属するのがうれしい。長期的に使い続けるなら、NT-H2を買い直す方が安心感がある

CPUグリスの正しい塗り方・量の決め方

ステップ別:古いグリスの拭き取り → 塗布 → 取り付けの流れ

グリスの塗り替えで最も大事なのが古いグリスの完全除去だ。残ったグリスの上に新しいグリスを重ねても効果は半減する。

  1. 無水エタノール(IPA)で古いグリスを拭き取る — ティッシュではなくコットンやマイクロファイバーを使うと繊維が残らない
  2. CPUとヒートスプレッダの両面を拭く — クーラーのベースプレート側も忘れずに
  3. グリスを米粒1粒(約0.2ml)中央に置く — 多すぎてはみ出すのが最悪のパターン
  4. クーラーを静かに乗せて均等に押し込む — ねじを対角順に少しずつ締める
初心者
初心者
薄く全面に広げた方がいいって記事も見たんですが、どっちが正解ですか?
中央に置いてクーラーの重さで自然に広げる「ドット法」が一般的には楽。CPUが大きい(Threadripper等)なら薄塗りの方が確実。普通のデスクトップCPUならドット法で十分です。

「米粒1粒」か「薄く全面塗り」どっちが正解?

どちらでも正解だが、初心者にはドット法(米粒1粒・中央置き)がおすすめだ。薄塗りは綺麗に広げる技術が要る。ドット法ならクーラーを乗せて押し込む圧力で自然に広がる。量の目安は「これ少なすぎじゃないか」と感じるくらいがちょうどいい。

取り付け後の確認方法

取り付け後はHWiNFO64やCore Tempなどでアイドル温度を確認。アイドル30〜40℃、ゲーム・高負荷で70〜80℃台であれば正常だ。90℃を超える場合は接触不良・量の過不足・クーラーの取り付けが疑われる。簡易水冷メンテナンスの記事も併せてチェックしてほしい。

CPUグリスをはみ出させたらどうなる?

カーボン・シリコン系グリスなら絶縁性なので少々はみ出しても問題なし。ただし金属系グリスは導電性があり、ピン・コンデンサに触れるとショートします。初心者は必ず絶縁系を使ってください。

よくある失敗3パターンと対策

① グリスを塗り直したのに温度が下がらない

原因の9割はクーラーとCPUの接触面が浮いていることだ。ネジの締め方が不均一だと、片側だけが密着してもう片側が浮いた状態になる。対策は取り付けネジを必ず対角順(×の字)で均等に締めること。急いで同じ側を連続して締めると確実に浮く。

② 金属系グリスをはみ出させてショート

液体金属グリス(例:Thermal Grizzly Conductonaut)を初めて使って、横に流れてCPUソケットに入り込む事故は珍しくない。簡易水冷と空冷を比較して高冷却を目指したいなら、液金より高性能な簡易水冷の方がリスクが低い。初心者は液金グリスには手を出さないこと

③ 半年で乾燥固着して温度上昇

安価なシリコン系グリスや粗悪品は半年〜1年で固着することがある。剥がすのが大変なうえ、CPU表面に傷がつくリスクもある。MX-4やKryonautなどの実績ある製品を使えばこの問題はほぼ起きない。簡易水冷の寿命と合わせてグリスの定期交換を習慣にしておこう。

まとめ:グリス選び&塗り方チェックリスト

  • ✅ 付属グリスから交換するだけで5〜10℃改善が見込める
  • ✅ 初心者はARCTIC MX-4またはThermalright TF7がベストな入門選択
  • ✅ 金属系グリスは絶対に避け、カーボン・ダイヤモンド系を選ぶ
  • ✅ 塗布量は「米粒1粒」をCPU中央に置くドット法が失敗しにくい
  • ✅ 取り付けネジは必ず対角順で均等に締める
  • ✅ 3〜5年ごとの定期交換でCPU温度を安定させる
  • ✅ OC・高TDP環境ならKryonautやSMZ-01Rにアップグレードを検討

▶ 次に読む記事: 簡易水冷でグリスが必要な理由と正しい塗り方 / 簡易水冷おすすめ24選(爆熱CPU向け) / CPUクーラーおすすめ16選