PTM7950ってグリスと何が違うの?貼るだけで数年もつなら塗り替えたい
グラボのグリスを塗り替える人の間で、PTM7950という名前をよく見かけるようになりました。ハネウェル製の相変化シートで、今年のミドルクラス以上のグラボは出荷時からこれを使っています。
グリスとの違いは一点、乾かないので数年は塗り替えなくていいことです。貼った直後の温度はKryonautと同じで、差が出るのは半年後からになります。
代わりに、常温では固くて破れやすく、偽物も混ざっています。冷蔵庫で冷やしてから貼ること、国内の正規品を買うこと。この2つを守れば失敗しません。手順と買う店まで書きました。
▶ まずは動画でサクッと要点チェック
親和産業のPTM7950を実際に貼っている動画です。失敗例も映っているので、破れやすさの感覚がつかめます。
PTM7950はグリスと何が違う?乾かないから塗り替えがいらない
- 45℃でゲル状に変わる
- 冷めると固まる
- 乾き・流出がない
- 150℃1000時間の試験に合格
45℃で溶けて隙間を埋め、冷えると固まる。乾きも押し出しも起きない
PTM7950は、ハネウェルが作っている相変化素材(PCM)のシートです。常温では固いシートで、45℃前後を超えるとゲル状に柔らかくなり、ダイとクーラーの隙間を埋めます。冷えると再び固まり、この繰り返しで密着していきます。
グリスが劣化する原因は2つ。乾いてひび割れるドライアウトと、熱の伸び縮みで押し出されるポンプアウトです。PTM7950は温度が上がるたびに液状に戻るので、乾きも押し出しも起きません。
親和産業の製品ページには、150℃で1000時間の加熱試験と、マイナス55℃から125℃を1000回繰り返す試験に合格したとあります。熱伝導率は8.5W/mKで、数字だけ見ればMX-4と同じです。差は伝導率ではなく、密着の仕方と持ちにあります。
📱 メーカーも出荷時に採用(Xより)
Sapphireは新しいRadeonの出荷時のグリスにPTM7950を採用しています。メーカーが最初から使う素材だと分かる公式ポストです。
では、グリスより冷えるのか。「冷える」と聞いて買うと、貼った直後にがっかりするかもしれません。温度の差は、貼った瞬間ではなく数か月後に出る素材だからです。実測ブログ2本の数字を並べます。
| 検証元 | 条件 | 結果 |
|---|---|---|
| 自作とゲームと趣味の日々 | RTX 3090(420W)・Kryonautと比較 | ファン固定でほぼ同等、自動制御でPTM7950が約1℃低い |
| にごろぐ | 9800X3D(360mm水冷)でグリス3種と比較 | 馴らし運転後に10℃以上低下。Heilos V2が最良、PTM7950は中位 |
貼った直後はKryonautと同じ。RTX 3090でも1℃しか変わらない
自作とゲームと趣味の日々の検証は、420WのRTX 3090で高性能グリスKryonautと比べたものです。結果は、ファンを固定するとほぼ同じ温度、自動制御だと1℃ほどPTM7950が低い程度でした。
グリスより劇的に冷える素材ではありません。同じ熱伝導率8.5W/mKなので、これは当然の結果です。冷却を上げたいなら、素材よりファンやケースの風の通りを見直すほうが効きます。
馴らし運転を数回挟むと10℃下がる。最初の温度で判断しない
もう1つ知っておきたいのが馴らし運転です。にごろぐの検証では、貼った直後より、高負荷を何回か回した後のほうが10℃以上低くなりました。溶けて固まるを繰り返して、初めて隙間が埋まるためです。
親和産業も、60〜80℃になる負荷を10〜20回繰り返して馴染ませるよう案内しています。貼ってすぐベンチを1回回して「冷えない」と判断すると、本来の性能を見ずに終わってしまいます。
差が出るのは半年後。グリスは乾いて上がり、PTMは変わらない
グリスは種類にもよりますが、数か月から1年で少しずつ温度が上がってきます。PTM7950は乾かないので、1年たっても貼った時の温度のまま。自作とゲームと趣味の日々でも、長期で性能が落ちない点を利点に挙げています。
つまり「冷える素材」ではなく「冷えたまま持つ素材」です。グラボは一度クーラーを外すと保証の扱いが変わることもあるので、開ける回数を減らせるのは実用上の大きな差になります。グリスの交換時期の目安はCPUグリスの交換時期の記事にまとめています。
📱 貼り替えた人の声(Xより)
グラボとCPUの両方をPTM7950に替えた人の声です。低電圧化と組み合わせて「めっちゃ冷えるようになった」とのこと。
グラボに貼る手順と、つまずくところ
貼り方そのものは単純です。つまずくのは「固い」「破れる」「冷えない」の3か所なので、その順に書きます。
- 作業直前まで冷蔵庫で冷やす
- 片面ずつフィルムを剥がす
- ダイの中央に置いて押し付ける
- クーラーを戻して高負荷を10〜20回
作業の直前まで冷蔵庫で冷やす。常温だと剥がす時に破れる
PTM7950は常温でも少し柔らかく、フィルムを剥がすときに伸びて破れます。親和産業も自作とゲームと趣味の日々も、作業直前まで冷蔵庫で冷やすよう勧めています。冷えると固くなり、フィルムがきれいに剥がれます。
親和産業のシートにはフィルム剥がし用のシールが付いています。片面を剥がしてダイに載せ、押し付けてからもう片面を剥がす順番です。冒頭の動画で失敗例と一緒に見られます。
破れても大丈夫。溶けて広がるので気にしなくていい
それでも破れることはあります。多少破れても、温度が上がればゲル状になって広がるので、性能にはほぼ影響しません。自作とゲームと趣味の日々も「多少破れても気にしなくてOK」と書いています。
気をつけるのはダイからはみ出す量です。80×40mmのEXTRA SIZEはグラボのダイより大きいので、ダイの大きさに合わせてハサミで切ってから貼ります。切る作業も冷やした状態でやると楽です。
貼ったら高負荷を数回回す。密着して温度が落ち着く
クーラーを戻したら、ベンチマークやゲームで60〜80℃の負荷を10〜20回繰り返します。この馴らしで10℃以上下がるのは前の章のとおりです。1回目の温度が高くても、そこで開け直さないでください。
一度クーラーを外したシートは、気泡が入るので再利用しないよう親和産業が案内しています。開け直すなら新しいシートが必要です。VRAMのサーマルパッドも一緒に替えるなら、パッドの厚さの測り方をグラボのサーマルパッド交換の記事で確認してください。
PTM7950かグリスかがわかる30秒診断
Q1. クーラーを外す頻度はどれくらい?
👇 選ぶと次の質問に進むよ
偽物が多いと言われる理由と、本物を買える店
- 別素材のすり替え
- 期限切れの再販
- 見た目では分からない
- 国内正規品は親和産業
PTM7950で検索すると「偽物」という言葉が必ず出てきます。ハネウェルは個人向けに小分け販売をしておらず、市場に出ているシートの多くは工場向けの大きなロールを切り分けたものだからです。ここから3つの問題が起きます。
中身が別の素材だったり期限切れだったりする
にごろぐは、AliExpressや一部のAmazon出品について「真贋不明」と書いています。noteで相変化パッドを比較した投稿では、PTM7950と表記されていても中身が別の相変化素材PCM8500だった例が報告されています。
相変化素材には使用期限があり、古いものは性能が落ちます。安いものほど、素材のすり替えか期限切れかのどちらかを疑う必要があります。
見た目では見分けられない。買う店で決めるしかない
「厚みが0.25mmなら本物」「黒い点があれば本物」といった見分け方が出回っていますが、どれも決め手にはなりません。偽物は厚みも見た目も本物に寄せてくるので、届いたシートから判断するのは無理です。
できるのは、買う店を選ぶことだけ。メーカーが正規代理店として扱っている製品なら、素材も期限も確かです。
国内なら親和産業のHoneywell純正シートが確実
- 80×40mm・2,073円
- GPU220W以上向け
- Amazonやツクモで買える
国内で買うなら、親和産業のPERIHELION PHASE CHANGE MATERIALが確実です。ハネウェル純正のPTM7950を親和産業が切り分けて売っている製品で、Amazon、ツクモ、ヨドバシに並んでいます。
グラボには80×40mmのEXTRA SIZEを選びます。親和産業はこれを消費電力220W以上のGPU向けとしていて、RTX 5070以上のクラスがちょうど当てはまります。Amazonでは2,073円、レビューは3件でまだ少ないものの、AM5用の同シリーズは45件で★4.4です。
安く済ませたいなら、ThermalrightのHeilos(30×40mm・399円)という相変化シートもあります。ただしレビューは7件で★3.6と評価が割れているので、初めてなら親和産業のほうが無難です。
PTM7950をやめてグリスでいい人
PTM7950が向かない人もはっきりしています。開ける頻度が高い人と、CPUだけの人です。
半年〜1年でクーラーを開けるならグリスで十分
- MX-4は4gで840円
- 何度でも塗り直せる
- 拭き取りが楽
クーラーをよく外す人、パーツをよく入れ替える人は、グリスのほうが向いています。PTM7950は一度外すと再利用できず、そのたびに2,000円のシートが要ります。自作とゲームと趣味の日々も、短期で着脱を繰り返すならグリスが上と書いています。
定番はARCTIC MX-4です。4gで840円、レビューは7万件で★4.5。乾きにくさに定評があり、グラボのダイにも使えます。グリス同士の比較はMX-4とKryonautとナノダイヤの比較記事に、塗り方はCPUグリスの塗り方の記事にあります。
CPUに使いたいならAM5用の23×23mmを選ぶ
PTM7950はCPUにも使えます。Ryzen AM5のヒートスプレッダに合わせた23×23mmが親和産業から出ていて、1,191円。にごろぐの9800X3Dの検証もこのシートです。切らずにそのまま載せられるので、グラボより簡単に貼れます。
IntelのLGA1851用も同シリーズにあります。CPUのグリスが乾いて温度が上がってきたときの判断は、CPUグリスの交換時期の記事を参考にしてください。
VRAMのパッドも一緒に替えるならODYSSEY
グラボを開けるなら、VRAMやVRMのサーマルパッドも同時に替える人が多いです。PTM7950はダイ用で、VRAMの段差を埋める役目はパッドにしかできません。定番はThermalrightのODYSSEYシリーズで、厚さはカードごとに違うので先に元のパッドを測ります。
よくある質問
使えます。親和産業からRyzen AM5用(23×23mm)とIntel LGA1851用が出ていて、ヒートスプレッダに合わせて切らずに載せられます。にごろぐの9800X3Dの検証でも、馴らし運転後は高性能グリスと同等以下の温度でした。
できません。クーラーを外すと気泡が入るため、親和産業は再使用を勧めていません。開け直すときは新しいシートを用意してください。開ける頻度が高いなら、最初からグリスのほうが向いています。
メーカー試験では150℃で1000時間、温度の上下1000回に耐えています。実際に使った人からも1年たって性能が変わらないという報告があり、グリスのように数か月で乾く心配はありません。目安として3〜5年は開けなくて済む素材です。
ダイの大きさより一回り大きいシートを買って、切って使います。親和産業のEXTRA SIZE(80×40mm)ならほとんどのグラボに使えて、220W以上のGPU向けとされています。34×26mmの小さいシートは、ダイの大きなハイエンドだと足りないことがあります。
まとめ
- 数年開けないならPTM7950(親和産業EXTRA SIZE・2,073円)
- 半年〜1年で開けるならMX-4(840円)
- 貼る時は冷蔵庫で冷やして、貼ったら高負荷を10〜20回
- 決めたら親和産業のPTM7950/MX-4をAmazonで見る
PTM7950は冷える素材ではなく、冷えたまま持つ素材です。貼った直後の1℃差で判断せず、開ける回数を減らしたいかどうかで決めれば失敗しません。
安いシートは中身か期限のどちらかを疑う。国内の正規品を冷やして貼る、これだけ守れば大丈夫です。
※当サイトの個人的見解です。実機での検証は行っておらず、評価は自作とゲームと趣味の日々とにごろぐの実測、親和産業とハネウェルの公開仕様、Amazonレビューを総合したものです。温度はグラボの機種やケース、室温で変わります。価格・在庫は2026年9月2日時点のAmazon実ページの表記に基づき、変動します。グラボの分解は保証の扱いがメーカーごとに異なるため、事前に確認してください。
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