パソコンの冷却方法には、大きく分けて簡易水冷と空冷の2種類があります。高い冷却性能を求めるなら簡易水冷、手軽さやコストを優先するなら空冷がおすすめです。本記事では、それぞれのメリットと人気モデルに加え、設置時の注意点まで詳しく解説します。
簡易水冷のメリット

高い冷却性能

高負荷でも冷却安定
高温環境にも有利
CPU温度の余裕大
ラジエータと液冷ポンプで効率的に熱を逃がせるため、高負荷時でもCPU温度を安定して抑えられます。特にハイエンドCPUを搭載した構成など、熱がこもりやすい環境での使用時に心強い冷却性能です。
簡易水冷は液体を循環させる構造で、熱伝導効率が空気より高いからです。
ファンだけでなくラジエータ面積も活用できるため、効果的に冷却できます。
ケース内エアフローを妨げにくい

簡易水冷では大型クーラーの代わりにウォーターブロックをCPUに設置するため、マザーボード周辺のエアフローを確保しやすいです。これによりケース内部の熱が効率よく排出され、パーツ全体の温度上昇を防ぎます。
ケース内温度の上昇が抑えられるため、パーツのパフォーマンス低下を防ぎやすくなります。
またファン回転数を抑えられれば、騒音面も改善しやすいです。
大型ヒートシンクより干渉が少ない
メモリとの干渉低減
配線スペース確保
CPUソケット回りが広い
簡易水冷クーラーは本体がコンパクトなブロック構造なので、メモリやマザーボードのヒートシンク部分と干渉しにくいです。大型の空冷クーラーでは物理的制約が多くなる場合があり、取り付け前のパーツ選びが難しくなりがちですが、簡易水冷だと比較的自由度が高くなります。
ウォーターブロックが小型なので、タワー型ヒートシンクに比べると干渉しにくいです。
ただしラジエータの設置スペースだけは事前に確認しておく必要があります。
静音化しやすい
高い放熱効率を活かし、ファンの回転数を低めに設定できるため動作音を抑えやすいです。ポンプの音は多少発生しますが、近年のモデルは静音設計が進んでいます。長時間の作業や深夜の使用でも静かに運用しやすいのがメリットです。
極端に回転数を下げると温度は上がりますが、簡易水冷の放熱効率は高いです。
CPUの熱設計次第では低速ファンでも十分に冷却が可能でしょう。
見た目のカスタマイズ性
光学ドライブベイが減ったりサイドパネルがガラス化しているケースでは、クーラーの外観も重要なポイントです。簡易水冷ならポンプヘッド部分にRGBやLCDを搭載している製品が多く、カスタマイズ性が高いのも魅力といえます。
最近のモデルは外観と性能が両立しているものが多いです。
予算と好みに合わせて、デザインも妥協せず選べますよ。
空冷のメリット

構造がシンプルで故障リスクが小さい
ポンプ部品不要
液漏れリスクなし
経年劣化が少ない
空冷はヒートシンクとファンのみのシンプル構造なので、ポンプやチューブが存在しません。液冷特有の液漏れなどを考慮する必要がなく、長期間安定して動作しやすいです。さらに故障要因が少ないぶん、交換パーツの用意も容易といえます。
ファンの寿命にもよりますが、3~5年程度は問題なく使えるケースが多いです。
ヒートシンク自体は故障しにくく、メンテナンス次第でさらに延命が期待できます。
価格が安い
空冷クーラーは2000~3000円台から充実しており、安価な製品でも十分な冷却性能を得られる場合があります。上位モデルでも簡易水冷に比べてリーズナブルなので、コストをかけずにパソコンを組みたい方には魅力的です。
一般的なミドルレンジCPUなら問題なく冷やせます。
ただしオーバークロックや高発熱CPUには、ある程度の冷却性能を持つモデルが必要です。
メンテナンスが容易
ファン交換が簡単
ホコリ掃除も楽
ポンプ故障が無縁
空冷クーラーはヒートシンクとファンがメインの構造のため、埃が溜まったらカバーを外して掃除しやすいです。ファン単体で交換・アップグレードも行えるので、冷却強化や静音性向上も比較的手軽に行えます。トラブル時の対応も簡単です。
ケース内のホコリの溜まり方にもよりますが、数カ月に1回ほどが理想です。
フィルターを取り外して掃除機やエアダスターでケアするだけでも効果的です。
消費電力が低い
空冷はポンプの駆動がなく、主にファンの消費電力のみです。もちろんファンの回転数や数にもよりますが、簡易水冷より電力を抑えられる傾向があります。電気代を少しでも節約したい方にはメリットになるでしょう。
ポンプがないので電力負荷と発熱が少なく、負荷のかかる作業でも比較的安定しやすいです。
ただし高温になる環境では注意が必要です。
取り付けが簡単&互換性が広い
空冷はヒートシンクをマザーボードにネジまたはクリップで固定し、ファンを留めるだけのシンプル手順です。メーカー各社が複数のCPUソケットに対応した製品を多数展開しているため、自分の環境に合わせて選びやすいでしょう。
製品の仕様表や公式サイトに対応ソケット一覧が載っています。
インテルやAMDの各世代ソケットをしっかりチェックして購入しましょう。
簡易水冷人気モデル7選
Corsair iCUE H150i ELITE LCD XT 2.1″

LCDで温度やGIFを表示、360 mmで静音高冷却バランス良好
NZXT Kraken Elite 360 RGB 大型2.36″

LCDと最新ポンプ採用、鮮やかRGBで性能も映えも両得
厚型ラジエータ+低騒音ファン、ブラック統一でシックな高性能機
Arctic Liquid Freezer III 360

独自VRMファン付き設計、600 RPM時30 dB未満の静音と強力冷却
Cooler Master MasterLiquid 360 Atmos

再設計ポンプとFluxファンで20 dB級、環境配慮の再生プラハウジング
be quiet! Silent Loop 2 360 Silent Wings

3ベースのファンで負荷50%でも約20 dBの超静音動作
MSI MAG CORELIQUID M240

ラジエータ内蔵ポンプで振動低減、240 mmでもハイエンドCPUをカバー
Thermaltake Floe Ultra 360

ARGB LCD 2.1″IPSディスプレイとARGB対応、オーバークロック向け冷却を実現
空冷人気モデル7選
虎徹 MARK3

多重エアフロー透過構造と120 mmファンで冷却と静音を両立
Noctua NH-D15 chromax.black

6本ヒートパイプ&デュアル140 mmで空冷頂点級の性能と静けさ
Thermalright Phantom Spirit 120 EVO

デュアルタワーながら低背160 mm、コスパに優れる高効率モデル
be quiet! Dark Rock Pro 5

7本パイプ+デュアルファン、25 dB以下の静音で250 W超を冷やす
Cooler Master Hyper 212 Halo

定番212 シリーズ最新、ARGB対応でケース映えと十分な冷却力
Arctic Freezer 36

オフセットヒートパイプと圧倒的コスパ、PWMファンで静音制御可
Noctua NH-U12A

120 mmクラス最高峰、9 本パイプ級密度フィンで大型並み性能
設置時の注意点

ケース内スペースと干渉チェック

クーラーのサイズとPCケース内部の空きスペースを事前に確認し、メモリやVRMヒートシンクとの干渉がないかチェックしましょう。ラジエータ式の簡易水冷や大型ヒートシンクの場合は、ラジエータやフィン部分が縦横に広くなるため、特に注意が必要です。
メーカーの製品ページに記載されている対応クーラーサイズや高さ制限を確認しましょう。
奥行きや幅の寸法を考慮しながら、余裕を持った選定を行うのがおすすめです。
マウント圧とグリスの均一塗布
クーラーを固定する際は、ネジやクリップを対角線上に少しずつ均等に締め付けて、マウント圧を一定に保ちましょう。グリスはCPU中央に適量を塗布し、取り付け時の圧で広げると均一に行き渡りやすいです。不要な隙間や偏りを防ぐことで冷却効率が向上します。
CPU表面の中央に米粒大程度が標準的です。
量が多すぎると周囲にはみ出しやすく、少なすぎると隅々まで行き渡りません。
エアフロー設計とファン向き
排気ファンと吸気ファンのバランスを考え、ケース内が負圧や正圧になりすぎないように配置しましょう。ファンの向きは、ヒートシンクへ風を送り込む側と排気を行う側を揃えることが重要です。効率的に外気を取り込み、熱気をスムーズに排出できれば冷却性能が高まります。
ある程度は向上しますが、むやみに増やすと騒音や消費電力が増えるため注意が必要です。
適切な配置と向きの最適化が大切です。
記事のまとめ
- 簡易水冷は高い冷却性能とカスタマイズ性
- 空冷は低価格で故障リスクが小さい
- 大型ヒートシンクとラジエータの干渉に要注意
- ケース内のエアフローを意識した取り付け
- ファン回転数を調整して静音化を図る
- マウント圧とグリスの塗布で冷却効果を最大化
- ソケット互換と取り付けキットの有無を確認
- 清掃やメンテナンスで常に本来の性能を維持
自作PCにおいて、クーラー選びはシステムの安定性や騒音レベルに直結します。この記事を参考に、簡易水冷か空冷か、自身の用途や好みに合わせて検討してみてください。